万引きGメンのおっちゃんから内線連絡、おじいちゃんが連れて来られて話を聞くことになった

万引きGメンのおっちゃんから内線連絡、おじいちゃんが連れて来られて話を聞くことになった。

「上がちゃんとしてたら下も行き渡るんだなあ」・「専務いい人…(泣)」

「今は別の仕事してるけど、年末になると思い出す。」
出典 / open2ch

この時期になると思い出す、修羅場というか何というかなんだけど。

昔、10年も前かな、スーパーの事務職で働いてた。年末年始は高額商品が増えるので万引きチェック体制が厳しくなる。

必然的に、普段なら見つからない万引きも見つかったりする(逆に人が多いので成功する場合もあるらしい)

30日か31日だったか、万引きGメンのおっちゃんから内線連絡があり、万引きを一人確保したから

事務所まで連れていくとのこと。

その日はクソ高い刺身や肉や寿司を万引きしてたオバさんが確保されてたもんだから、

皆「あーまたオバはんかー」と思い込んでた。

でも、Gメンが連れてきたのは、おじいちゃん。

その時点で私含めた事務所の女性陣はちょっと同情的だった。

応接室は使えないし会議室はまだ店長と前述のオバちゃんが使ってる。

なので仕方なく、事務所内の簡易応接ソファセットで、仕切りもないまま

専務(その日は出勤してて暇だった&店長はオバちゃん対応中、副店長や部長は

売り場で忙しい)が話を聞くことになった。

Gメンのおじさんが困ったように、「大した金額じゃないからねえ…」と言い、

万引きされたものを出した。

定価80円に半額シール貼ってるあんパン1個と、紙パックの200mlの牛乳。たぶん52円。

専務も絶句した後、「……おっちゃん、100円で買えるからな? お金出してくれたら警察には

連絡しないから」と切り出した。

おじいちゃんは、うつむいたまま「……持っとらんです」と財布を出した。

専務が「開けさせてもらいます」と言って開けたら、10円玉が2枚か3枚、あとは5円と1円。

どう見ても100円もない、という状態だった。

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心苦しそうにしながら、「あー、○○さん(私)、私とAさん(Gメン)とこの人に、コーヒーもらえるかな」と

専務から指示がきた。私がいちばん下っ端だったからの指名だったと思う。

普段使わないドリップ式でコーヒー淹れて、スティックじゃなくシュガーポットとミルクポットにして持っていった。

事務班主任の上司が「これも」とお茶菓子(年末で普段より出勤早いから間食用)のクッキーもくれた。

「どうぞ」と出したらおじいさんは困ったように私を見てた。専務が「飲んでやって下さい」と言ったら

おずおずと砂糖入れて口をつけてくれた。

専務とAさんが「何でこんなことしたの」「100円ないかなあ、ポケットに小銭ないかな?」と事情聴取開始。

おじいちゃんは年金受給者だけど医療費無料ではなくて、12月に続けて風邪やインフルエンザになり、

更に高血圧の発作か何かで予定外の出費が重なり、家賃と光熱費を払ったらもうお金がなくて、一昨日までは

小銭で何とか一日一食は食べてたけど、昨日からもうお金もなくて…だったらしい。

専務たちも声は潜めてるしおじいちゃんもポツポツとしか話さないんだけど、まるっと聞こえてる。

この時点で事務班は泣きだしていた。

で、私はたまらなくなって、カップ下げる時に専務に「私がお金払うから帰してあげて下さい!」と

叫んでしまった。泣きながら財布出して「100円あればいいんですよね!」と言ってたら、

専務が「落ち着いて、落ち着いて、な?」と言い、それで私は余計に泣いた。

事務班から事務主任のおばちゃんも出てきて「何なら私が払います!」と事務班全員号泣。

おじいちゃんびっくり。

専務が、おじいちゃんに「万引きなんかしなくても、家族の人は助けてくれませんか?」と訊いた。

県外に息子さんがいるけど、疎遠だし、金の無心の電話はしづらかったらしい。

戦前生まれの人ってそうなのかな。うちの祖父母もそうだった。

専務は「警察に引き渡したら、僕が皆に恨まれるな。おっちゃん、次の年金支給日までのご飯代、

これで足りるかな?」と3万円出した。

おじいちゃんが固まってると、「返しても返さんでもかまんよ。宝くじ買ったつもりで使う。

これでおっちゃんが、今日から明日の食事のこと気にしながら寝るんじゃなく、ゆっくり寝て

いい正月迎えられるんなら、そりゃ僕にとって年末ジャンボ大当選になる」みたいなこと言ってた。

おじいちゃんは散々固辞してたけど専務とAさんの「今日は初回だから見逃してあげられる。

でも次は警察に言わなきゃならん」「おっちゃん、実際問題、昨日から食べてないよね?

明日からもどうやって食べる?」と説得されて、受け取った。

その間に、私は小休憩取らせてもらって混雑した売り場に行って小さなおせちと年越しそばのセットを

一人前買ってきた(従業員なので売り場の人にサインもらったらバーコード剥がして後で支払できる)

これは主任の指示。

おじいちゃんが帰る前に何とか間に合ったので、「これ!おじいちゃん、今日はこっちの

おそば食べて!おせちは明日ね、胃を休めてからね。飲み物はお茶とポカリ買ってるから飲んでね」と渡した。

「ここまでしてもらうのは心苦しい」と謝るおじいちゃんに「いやもう買っちゃったから。食べて」とお願いした。

ありがとう、ありがとう、すみませんでしたとずっと頭を下げるおじいちゃんを、Aさんが家まで送っていった。

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2月になって、そのおじいちゃんから専務宛てに現金書留が届いた。

息子さんに話して、医療費免除券をもらえるように手配してもらったらしい。

「あの時はありがとうございました。一人きりやのに、一人やない正月を迎えられました」と添えてあった。

専務は「3万しか渡してないのに5万入っとる…」と悩んだ末、商品券を送ったらしい。

何が修羅場って、取締役専務に怒鳴りつけたことと、この一部始終を会長が会長室から覗いていたこと。

「スーパーで万引き犯にああいう対応したらいかんのじゃ!」とお叱りを受けた後、会長に「でも個人的には

正しい判断だと皆に言いたい」と褒めてもらった。

今は別の仕事してるけど、年末になると思い出す。長くてごめん。

書き込んだ後、思い出して泣いてた私はバカだと思う。

おじいちゃんが詐欺とかそういうのは、何でかわからないけど誰も疑わなかった。

服装は清潔で、でも髪はちょっとしかなくて、臭いとかじゃなくて薬っぽい匂いはしてたかな。

雰囲気的に、「追いつめられてる」って感じだった。

あんパンも半額のを選んでるし、万引きGメンのAさんは「多分最初は買うつもりで、でも途中で財布見て

お金がないことに気づいて、突発的にやっちゃったんじゃないか」と言ってた。

Aさんは巡回に入る度に確実に万引き犯を1~5人見つける凄腕だったから、Aさんが疑ってないことが

私たちにとっては妙な信頼感になったかもしれない。

専務の3万には驚いた。私たちは所詮その時の100円分しか考えてなくて、今日はそれで解放されても

明日からおじいちゃんがどうするのか想像してなかった。

後で皆で専務に謝って、「でも3万もよかったんですか、皆で少しずつ出すとか」と訊いたら

あの時カンパみたいにしてお金集めて渡すのはおじいちゃんのプライド砕くから駄目だって言ってた。

施しじゃないって言う為に「宝くじ買ったつもりで使うから、僕にとってはおっちゃんは福の神みたいなもの」って

意味のことを付け足したって。

高額万引きのオバちゃんは離れたところにある会議室で店長と警察の取り調べを受けてたから

襲撃はなかった(つーかあのオバさんは万引き額だけで5万越えてたから温情措置はなかった)。

Aさんは警察に気づかれないように、おじいちゃんを連れて会議室の前を通った時が一番のミッションインポッシブルだったらしい。

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