人の優しさが心に沁みる時。
精神的に落ち込み失敗ばっかしてた時期。ある日現場へ行ったら、そこにいた職人さんが…
建築屋の監督やってるんだけど、何年か前に精神的に落ち込んで
暗いオーラをビシバシ放ちながら、失敗ばっかしてた時期があった。
仕事の事で落ち込んでいたわけではなかったので
これ以上会社に迷惑をかけてはいけない、
この状態が続くなら辞めるしかないと思いながら仕事してた。
で、ある日現場へ行ったら、そこにいた職人さんが
「ちょっと時間ある?」と聞いてきた。
あまり人と話をしたくない精神状態でもあったんで、
「次へ行かなきゃならないんですけど」と答えると、
「10分だけここに座ってコーヒー飲んで行け」と言われた。
出されたホットコーヒーは、彼がいつも持ち歩いている水筒のもの。
彼の昼食用の飲み物だ。
自分の精神状態を察してくれたのだろうと思うと、涙が出そうになったが
コーヒーの湯気を顔に当てながら誤魔化した。
俺が黙ってコーヒーを飲んでいると、
彼は車へ戻り、何やら箱を持ってきて俺に渡した。
「これ、職人連中皆から」
なんだろう、と思いながら開けてみると、
ナイキのジョギングシューズが出てきた。
「そんな汚い靴で俺の現場に来るなって、皆言ってたぞ~」
足元を見ると、自分の靴はもうボロボロだった。
全然気付かなかった。皆、見ててくれてたんだ。
コーヒー飲みながら、今度こそ泣いた。
その靴ももうボロボロになっちゃったけど、まだとっておいてある。