最後まで読みきって!(笑)昔々、とある山に鬼が住み着き村人が困っていた
Twitterはこういう才能が眠っているからやめられない!引き込まれるように一気に見てしまった…!
『安井守生@科学と心理学は大事 – @Magio1976』さんによる、約50ツイートに渡る秀逸な噺!「最後までぜひ読んで」・「締めに驚愕…」・「落ちが大変素晴らしい」
むかーしむかし、とある山に鬼が住みついた。鬼はただ山道で座っているだけだったが、ある日、その道を通ろうとした3人に声をかけ、1人を喰らって2人は通してやる、と言って来たのじゃ。その日は引き返したが、次の日もその次の日も、鬼は同じ道に座っていた。
— 安井守生@科学と心理学は大事 (@Magio1976) March 2, 2023
どうしてもその道を通らねばならぬ村人2人が意を決して、鬼の元へ歩み寄った。「1人を食らって1人は通してやる。」と鬼は言った。親を亡くし、嫁も子供もいない若い男が、自分が食われると名乗り出た。村で一番、悲しむ者が少ない者である自分が食われるべきだ、と若い男は言った。
— 安井守生@科学と心理学は大事 (@Magio1976) March 2, 2023
良いだろう。通れ。鬼は言った。もう1人の村人は涙を堪えながら、脇目も振らず、振り返らず、その道を進んだ。
帰り道では、鬼は現れなかった。
しばらくたったある日、その道を通らねばならない用事が出来た村人がその道を訪れると、やはり鬼は座っていた。鬼は同じ要求をしてきた。
— 安井守生@科学と心理学は大事 (@Magio1976) March 2, 2023
行きの道で現れ、帰り道では現れない。道を通ろうとさえしなければ、鬼はいつも同じ山の同じ道に、ただ座っている。いつしか鬼は、山に座っている鬼という事で、山座鬼と呼ばれるようになった。
— 安井守生@科学と心理学は大事 (@Magio1976) March 2, 2023
さて、村では村人が少しずつ減って困っていた。月に1度はその道を通らねばならない。しかし働き手の男を鬼に差し出して失う訳にもいかず、かと言って女子供を鬼に食わせる訳にもいかない。困った村人達は、皆で鬼の元へ出向き、懇願した。
— 安井守生@科学と心理学は大事 (@Magio1976) March 2, 2023
ならば、年に一度、若い娘を喰らわせろ。男の肉はもう要らぬ。年に一度、2月の初めの日に、若い娘を喰らわせろ。そしたら1年の間は、誰でも通って良いぞ。約束を違えてみよ、村の者みな喰ろうてやるぞ。
— 安井守生@科学と心理学は大事 (@Magio1976) March 2, 2023
その道を通る度に村人が食われて来たのだ。年に一度、2月の初めの日に若い娘を差し出さなければ、この鬼は必ず村までやって来て、村人はみな食われてしまうだろう。そう思った村人は、泣く泣く鬼の言う通りにする事にした。
— 安井守生@科学と心理学は大事 (@Magio1976) March 2, 2023
2月のその日がやってきた。村人達は、鬼の元に1人の若い娘を連れて行った。
ふむ。うまそうじゃ。約束を守ったか。ならばこれを持ち帰れ。鬼は、壱と書かれた木の札を村人に投げてよこした。その札を見る度に、ワシに差し出した娘の数を思い出し、恐れるが良いぞ。
— 安井守生@科学と心理学は大事 (@Magio1976) March 2, 2023
娘は、この鬼に最初に喰われた若い男の事をずっと好いていた。
娘は、もう生きる望みを失った、あの若い男の元へ自分も行きたいと思い、進んで鬼に喰われる役目を引き受けたのだった。
1人の村人が、鬼が投げてよこした壱と書かれた木の札を拾い上げた。この村人だけが、娘の思いを知っていた。
— 安井守生@科学と心理学は大事 (@Magio1976) March 2, 2023
さて、木の札が5つになる頃、村にはもう鬼に差し出せる娘はいなかった。
困った村人達は、鬼の元へ出向いて必死に頼み込んだ。
4月の終わりの日まで待ってやる。必ず若い娘を連れて来い。村に娘がおらぬなら、どこかの娘を騙して連れて来い。約束を違えてみよ、村の者みな喰ろうてやるぞ。
— 安井守生@科学と心理学は大事 (@Magio1976) March 2, 2023
困り果てた村人たちは毎日まいにち、どうしたものかと話し合った。本当にどこかから若い娘をさらってきて鬼に食わせてしまおうか、そう考える者も出てくる有様。
そんなある日、村人の1人が隣の山に登ったおり、滝のそばを通りがかると、1人の修験者がいるのが目に入った。
— 安井守生@科学と心理学は大事 (@Magio1976) March 2, 2023
藁にもすがる思いで修験者に話かけると、酒臭い息でその修験者は言う。ふむ、それはさぞ困っておろう。しかし得心がゆかぬ。何ゆえその鬼は、ずっと座っておるのだ。
目を閉じてしばし考えたのち、修験者は言った。良いだろう。共にお前たちの村に行こう。考えがある。わしの言う通りにしてみよ。
— 安井守生@科学と心理学は大事 (@Magio1976) March 2, 2023
村に着くと修験者の元に村人たちが集まってきた。修験者は皆に尋ねた。
さて、お前たちの中で、どこからか若い娘をさらって来て鬼に食わせようと考える者はおるか?
みな、一斉に1人の村人の方を見た。みなに注目され、縮こまる村人。
わっはっは。まぁそうもゆくまい。わしに考えがある。
— 安井守生@科学と心理学は大事 (@Magio1976) March 2, 2023
修験者に言われるまま数名の村人が、麦を粉にして水で練り、人の形に練り上げると、それを薪の火で焼き固めた。
これに女物の着物を着せて、鬼に差し出してみよ。その鬼、ひょっとするとひょっとするぞ。
— 安井守生@科学と心理学は大事 (@Magio1976) March 2, 2023
約束の4月の終わりが近づいていた。村人たちは、修験者に促され、鬼の前に着物を着せた人型のそれを差し出した。
おお、待ちかねたぞ。約束を守ったか。ならばこれを持ち帰れ。
鬼は例の壱と書かれた木の札を投げてよこした。
やはりな。
修験者が言った。
あの鬼、目が見えぬぞ。
— 安井守生@科学と心理学は大事 (@Magio1976) March 2, 2023
麦の粉を水で練って人の形に練り上げ、薪の火で焼き固め、女物の着物を着せた「それ」に、今にも噛みつこうとする鬼。
修験者が、ふっと鼻を鳴らす。
「しかし味はごまかせぬ。」
「それ」に牙を突き立てた鬼が、ぴたりと動きをとめた。これは人の血肉の味ではない、おのれ、おのれ、たばかったな!
— 安井守生@科学と心理学は大事 (@Magio1976) March 2, 2023
ひいっと声をあげてその場にへたりこむ村人。
そこか!今にも飛びかからんとする鬼。
鬼の前に修験者が立ちふさがる。
おんきりきりばさら ばさり ぶりつ
まんだまんだ うんはった! きええい!
— 安井守生@科学と心理学は大事 (@Magio1976) March 2, 2023
修験者が唱えると、鬼は目に見えぬ力で強く地面に押し付けられ、うめき声をあげた。うがああああああ!
答えよ、お前は何者か。
何ゆえこの山に座して人を食らう?
鬼が答える。
我は上総の国では名の知れた鬼。侍に両の目を突かれ、上総の国を追われ、逃げに逃げてこの武蔵の国へたどり着いた。
— 安井守生@科学と心理学は大事 (@Magio1976) March 2, 2023
山を彷徨い、もはや歩く力もなく、目が見えぬでは人も獣もとらまえて喰らうこともあたわず。これまでかと思い、座して死を待つのみと諦めておったところ、人の声を聞いた。足音は真っ直ぐにこちらへ向かって来た。この機を逃しては人の血肉を喰らう事は出来ぬと思った。
— 安井守生@科学と心理学は大事 (@Magio1976) March 2, 2023
我の目を突いた侍に脅され、人を食わずひっそりと生きようかとも思ったが、背に腹は変えられなんだ。鬼を恐るるが人の常。目が見えぬ事を悟られぬよう、向こうからこちらに来るように仕向けた。村人を喰ろうた後は力が戻ったので、せめてもの贖いと思い、人を脅かさぬよう術で姿を消した。
— 安井守生@科学と心理学は大事 (@Magio1976) March 2, 2023
しかし、腹が減れば術が解けた。それからというもの、腹が減った頃になると村人が向こうから喰われにやって来るようになった。我はただ、ここに座しておれば良かった。見えぬ目で歩き回る必要は、もう無いのだと思った。しかし我の目を突いた侍がもしここへ来たらと思うと、恐ろしゅうて仕方なかった。
— 安井守生@科学と心理学は大事 (@Magio1976) March 2, 2023
ある日、村人が涙ながらに訴えて来た。もう人を喰われとうない、と。我も心が痛まぬではないが、しかし目は見えずとも上総の国の鬼の王。人に情けを掛けたとあっては名が廃る。ならば若い娘を差し出させた。若い娘の滋養のある血肉を喰らえば、術で1年は姿を消していられよう。
— 安井守生@科学と心理学は大事 (@Magio1976) March 2, 2023
我の目を突いた侍から姿を隠し、村人を脅かさずにいられる。これが我にできる精一杯の事であった。
そうか。
修験者が言う。
己が業を受け止め、その報いを受ける覚悟はあるか?
是非に及ばず
呻き苦しみながら、喉の奥から絞り出すように、鬼が言った。
— 安井守生@科学と心理学は大事 (@Magio1976) March 2, 2023
修験者は少しの間、目を瞑り、そして目を開くと、両手の指を組んだ。
のうまくさらば たたきゃていびゃく
さらば もっけいびゃく
さらばた たらた せんだ
まかろしゃだ うんきき うんきき
さらば びき なん うん
たらた かんまん!
修験者の、組んだ指先から、勢いよく炎が燃え上がった。
— 安井守生@科学と心理学は大事 (@Magio1976) March 2, 2023
きええええい!!!
その指先を刀の如き勢いで鬼に向け、指先から吹き出す炎が鬼に浴びせかけられようとした、その時、
おやめください!
1人の村人の女が修験者の前に立った。
— 安井守生@科学と心理学は大事 (@Magio1976) March 2, 2023
聞けばこの鬼は目が見えぬとの事。人をとらまえる事もできず、こうでもしなければ座して死ぬるを待つしかなかったとの事。なればこれ以上、人を差し出さねば良いだけの話ではありませぬか。
ほう。だがしかし、今まで喰われた者の家族の者はどうだ?
修験者が訊ねたが、他の村人は何も言わなかった。
— 安井守生@科学と心理学は大事 (@Magio1976) March 2, 2023
この鬼を殺めても、喰われた者は帰って来ません。例え鬼とて、目が見えず、死を待つだけの者を殺めては…我らまで鬼になっては……それだけは……。
修験者は目を閉じ、黙って女の言う言葉を聞いていた。
そこの石段を登った先に、朽ちかけた社があります。そこにお住まい下さい。
— 安井守生@科学と心理学は大事 (@Magio1976) March 2, 2023
人の血肉は差し上げられませんが、先ほどあなたが噛み付いた物…修験者様に教わった麦餅でよろしければ、社の方へお届けします。
鬼よ、村の女はこう言っておるぞ。どうなのだ?答えよ。修験者はそう訊ねると、鬼にかけていた金縛りを解いた。
鬼は少しの間黙っていたが、やがて口を開いた。
— 安井守生@科学と心理学は大事 (@Magio1976) March 2, 2023
如何に落ちぶれようとも、我は上総の国の鬼の王。人の施しを受けたとあっては名が廃る。
修験者は腕組みをして鬼の言葉を聞いていた。
ふっ…人の施しは受けぬ、か…。
ならばどうだ、お前の力で何か村人に与えてやれる物は無いのか?
鬼は少し思案した後に答えた。
— 安井守生@科学と心理学は大事 (@Magio1976) March 2, 2023
我が名はこの武蔵の国にも轟きたり。禍事や病を運ぶ下等な物の怪やらが、我が姿を見て恐れ慄き、先を争って逃げるを聞いた。なれば、我が名の一文字を刻んだこの木の札を持つ者は、物の怪を寄せ付けぬ加護を受けよう。
鬼は例の、壱と書かれた木の札を見せてそう言った。
— 安井守生@科学と心理学は大事 (@Magio1976) March 2, 2023
ほう。魔除けの札といったところか。女よ、それで良いか?
村人の女は安堵したような顔をして、黙って頷いた。
よし。なれば、ほれ、いつまでそこにへたり込んでおるのだ鬼よ。社を見に行くぞ。
修験者と村の男に支えられながら、鬼は石段を登り、社の前にたどり着いた。
— 安井守生@科学と心理学は大事 (@Magio1976) March 3, 2023
ここか。まぁ雨風は凌げよう。さあ、鬼よ、お前は今日からここに住まうのだ。村の者があの麦餅をここに運んで来る。お前はそれを食らい、代わりに木の札を渡すのだ。
我に、ここでそうして生きよと?
うむ。まさか鬼が社に住まうなどとは、お前の両の目を突いた侍も思うまい。
— 安井守生@科学と心理学は大事 (@Magio1976) March 3, 2023
鬼は何やら言いたそうな顔をしていたが、ずっと黙ったまましばらく考え込んでいた。村人たちも修験者も、何も言わなかった。
四半刻は経っただろうか、長き沈黙の後、鬼がぽつりと言った。
承知した
鬼は修験者と村人に連れられ社の中に入り、一番奥の壁に手で触れると踵を返し、そっと座り込んだ。
— 安井守生@科学と心理学は大事 (@Magio1976) March 3, 2023
鬼を残して村人は社を出た。次いで修験者も社を出るかと思いきや、くるりと鬼の方へ向き直った。
鬼よ、今一度問う。
如何に落ちぶれようとも上総の国の鬼の王、
その心持ちは今も変わらぬか?
鬼は顔を上げ、見えぬ目で真っすぐに修験者の顔を見た。
如何にも
— 安井守生@科学と心理学は大事 (@Magio1976) March 3, 2023
鬼のその言葉を聞くと、修験者は鋭い眼光で鬼の目を見返した。そして低く重い声で、
相分かった!
そう言うと、懐から取り出した短刀を鬼の膝に突き立て、勢いよく切り裂いた。
— 安井守生@科学と心理学は大事 (@Magio1976) March 3, 2023
鬼よ!ひとたびは人を喰らわずにひっそりと暮らそうかと思うたそうだが、結局は何人もの村人を喰ろうたお前のその性根、わしは認めておらぬぞ!!
修験者は鬼のもう反対の膝にも短刀を突き立て、横一文字に掻っ捌いた。
お前の為にこの社に麦餅を運んで来た村人を、いつ襲うやも知れん!!
— 安井守生@科学と心理学は大事 (@Magio1976) March 3, 2023
それほどまでお前の両の目を突いた侍に脅され怯えながらも、結局は人を食う事をやめられなかったお前の事だ、如何に落ちぶれようとも鬼の王、その心持ちがいつお前を再び人食い鬼にするかわからぬ!麦餅を運んで来た村人を襲い、這ってでも石段を下り、いつか村にたどり着き村人を喰らうやも知れん!!
— 安井守生@科学と心理学は大事 (@Magio1976) March 3, 2023
修験者は短刀を放り捨て、切り裂いた鬼の両の膝の傷を開くと、手を突っ込んだ。
お前はこれより、この社を出ることまかりならぬ!立ち上がることさえ許さぬ!そうは出来ぬように、お前の両の膝の皿を貰い受けるぞ!!
そう叫ぶと、修験者は鬼の両の膝から皿を抜き出した。
— 安井守生@科学と心理学は大事 (@Magio1976) March 3, 2023
お前のその性根が変わらぬ限り、村人がお前に麦餅を持って来るのは、お前が人を喰らうのに定めた2月の始めの日より4月の終わりの日までだ。それよりあとの月日は、如何に人の血肉を喰らいとうても、再び2月が来るまでただひたすらに耐え抜け!それがお前の業に対する報いじゃ!
— 安井守生@科学と心理学は大事 (@Magio1976) March 3, 2023
次にまた人を喰ろうてみよ、次は膝の皿だけでは済まぬぞ。
修験者は鬼の両の膝から抜き出した血まみれの皿を懐紙で包み、懐にしまい込んだ。
この日ノ本のどこにおっても、お前の元へ疾く来たりて、お前を跡形もなく焼き尽くしてやるからそう思え!良いな!!
— 安井守生@科学と心理学は大事 (@Magio1976) March 3, 2023
ぐおおおおお・・・・
鬼はただ両の膝を手で押さえ、呻いていた。
社の扉が閉じられた。
かくして、かつての上総の国の鬼の王、今では山に座る鬼という事で山座鬼と呼ばれる鬼は、社の中に座り、社に住まう事となった。
— 安井守生@科学と心理学は大事 (@Magio1976) March 3, 2023
修験者との取り決めで、鬼の元に麦餅を持って行くのは2月の始めから4月の終わりまでのはずだったが、実際には多くの村人が、それ以外の月日でも麦餅を社に供えた。心優しい者が多く住まう村だった。
— 安井守生@科学と心理学は大事 (@Magio1976) March 3, 2023
村人は麦餅を社に供え、その傍らに置いてある、壱と書かれた木の札を持ち帰った。その札を持ち帰った者は、不思議と病を患うこともなく、怪我をする事もなくなった。不運や不幸な出来事の起こることがなく、良い事だけがその木の札を持つ者の家に舞い込んだ。
— 安井守生@科学と心理学は大事 (@Magio1976) March 3, 2023
その様子を見て、今まで鬼に良い思いを抱いていなかった者たちまでもが、鬼の木の札を求めて社に麦餅を供えた。札のお陰か村はどんどん栄え、鬼の住まう社も綺麗に作り替えられた。離れた他の村までその噂は届き、鬼の札のご利益にあやかろうと、山をいくつも越えて多くの人が麦餅を供えにやってきた。
— 安井守生@科学と心理学は大事 (@Magio1976) March 3, 2023
社に住まう鬼の死後、鬼の顔を知る村人もいなくなり、社も再び朽ちた頃でも、その鬼の話だけは語り継がれていた。いつからか、膝の皿が無くては鬼が哀れだと、素焼きの皿に麦餅をのせて、それを朽ちた社に供えるようになっていた。
— 安井守生@科学と心理学は大事 (@Magio1976) March 3, 2023
2月の始めの日から、4月の終わりの日までの間、村の男が木の板に壱と書いた札を作って社に置き、村の女が麦餅を作って素焼きの皿に載せ、社に供えて木の札を持ち帰った。この村があった文久の終わり頃までは、そいういう風習だったそうな。
— 安井守生@科学と心理学は大事 (@Magio1976) March 3, 2023
その村がすっかりなくなり、その村の事を知る者が誰もいなくなった後でも、その鬼の話は語り継がれていった。鬼はいつの頃からか、とある大きな神社の祭神の一柱として祀られていた。人々は素焼きの皿と麦餅を神社供え、壱と書かれた紙のお札を持ち帰った。
— 安井守生@科学と心理学は大事 (@Magio1976) March 3, 2023
その鬼の札の霊験あらたかなること、あらゆる悪鬼外道死霊生霊、たちどころに滅ぶこと、霜に熱湯を注ぐが如し!という触れ込みもあり、2月の始めから4月の終わりまでの間には、多くの人が鬼の札を求めて神社に詣でた。鬼の札のご利益は確かなものであるらしく、この神社の人出は相当なものだった。
— 安井守生@科学と心理学は大事 (@Magio1976) March 3, 2023
大正の終わり頃になると、この風習もまた形をかえていた。2月の始めから4月の終わりまでの約90日の間、人々は何度も神社を訪れ、壱と書かれた札を持ち帰る。そしてその90日の間に札を30枚集めた者は、その札と引き換えに、祭神である鬼の姿が描かれた絵皿を貰うことができた。
— 安井守生@科学と心理学は大事 (@Magio1976) March 3, 2023
鬼の姿が描かれたその絵皿を家に飾れば、あらゆる悪鬼外道死霊生霊を退けるという事で、多くの人が皿を貰う為に神社に詣でて札を集めた。
今ではもう無くなってしまったこの神社の名は、その鬼の名から付けられていた。2月の始めから4月の終わりまでの祭りは、山座鬼神社春季麦餅大祭と呼ばれた。
— 安井守生@科学と心理学は大事 (@Magio1976) March 3, 2023
山座鬼神社春季麦餅大祭。
今ではその祭りは、
ヤマザキ春のパンまつり
と姿を変え、人々に愛されている。
そのまつりの起源に、こんな鬼の話があったのだという事を、どうか覚えておいておくれ。
これで、その鬼のお話はおしまい。
でたらめ、でたらめ。
ぜーんぶうそだよ ぷぅ。
— 安井守生@科学と心理学は大事 (@Magio1976) March 3, 2023
あーーー、書ききった!
すっきりしたー。
いやぁ、TLに春のパンまつりの話が上がるじゃん?
たまたま鬼滅関連の動画見てて、頭に鬼ってワードが浮かんでるじゃん?
ヤマザキ・・・ヤマザ鬼・・・まつり・・・パン・・・
って連想してたら、まずこのオチが浮かんだの。
— 安井守生@科学と心理学は大事 (@Magio1976) March 3, 2023
そしたらもう、そのオチありきのお話を作るしかないじゃない。ただこのオチに辿り着くために、設定をあれこれ考えてお話をこねくり回すじゃない。
20年前くらいに1回小説を書く真似事をした時のように、怒涛のように言葉が脳からあふれ出す、その割には歴史も古典も言葉も知らんから詰まるのよ
— 安井守生@科学と心理学は大事 (@Magio1976) March 3, 2023
それでもこのお話を書き連ねたい熱だけがドバドバと溢れて、本当はもっとサクッと終わらせるつもりが、まぁ設定の甘さと学の無さもあって、全くサクッと終わらず無駄に長くしちゃったなー。
まぁ楽しかったからいいや。
落とし話だから、オチは書かずに、それとなく広まってくれたら嬉しいな。
— 安井守生@科学と心理学は大事 (@Magio1976) March 3, 2023
「この位の時代にこの言葉はあったか?」
「パンに該当する日本語って何じゃ?」
「ヤマザキの歴史・・・ふむふむ」
なんてちょこまか調べながら、それなりにちょびっとだけ苦労したので、もし楽しんで貰えたら嬉しいです。
こんな駄文を最後まで読んでくれてありがとう。
— 安井守生@科学と心理学は大事 (@Magio1976) March 3, 2023
いやはや、感服しました!すばらしい!
— はむここ(四児の母) (@hamcocohrk) March 4, 2023
小出しにされてく情報がパタパタと注がれる器に満ちていって見事なヤマザキ春のパン祭りのフラグになるのが面白かったです
— みぃこ (@miico_koiso) March 4, 2023
楽しませて頂きました。
とても良かった。
— mikoto_fox (@mikoto_fox) March 5, 2023
めちゃめちゃ読み入ってしまって、、、
最後にまじか!そんな意味が!ってグッときて、
うそなんかーい!ってなりましたw
面白いお話をありがとうございましたw
— Nyalford温泉 (@nyalford4) March 4, 2023